ほっこり、うるうるしたお話


今朝起きたら、また雪でした。
予想外の雪にびっくり・・・
午前中福祉ネットのパソコン教室があり、様子を見て9時頃に生徒さんと連絡を取りました。
だんだん小降りになってきたので、予定通り授業を行いました。
教室は暖房してあっても足元から冷えてきて寒かったです。
そこでひとしきり雑談が始まりました。
子供の頃の方がもっと寒かった。
田んぼに厚い氷が張っていてみんなで良く遊んだ。
青森県出身の生徒さんは、雪国でも湿度が高いせいかこんなに底冷えのする寒さではなかったと。
たまには雑談もコミュニケーションの一つで楽しいものです。


話が変わりますが、今日の読売新聞にほっこり、うるうるする記事が掲載されていました。
それは、NPO法人・日本語検定委員会が、第5回「日本語大賞」(読売新聞社協賛)を発表しました。
その中の小学生の部で文部科学大臣賞を受賞した作品が紹介されています。
千葉県の小学校4年生の森田 悠生さんです。
とてもほっこりしてうるうるした文章で、底冷えのする寒さの中に作者の温かさがしみました。
全て引用させていただきます。

『ぼくがいるよ』
 お母さんが帰ってくる!一ヶ月近く入院生活を送っていたお母さんが戻ってくる。お母さんが退院する日、ぼくは友だちと遊ぶ約束もせず、寄り道もしないでいちもくさんに帰宅した。久しぶりに会うお母さんとたくさん話がしたかった。話したいことはたくさんあるんだ。
 帰宅すると、台所から香ばしいにおいがしてきた。ぼくの大好きなホットケーキのはちみつがけだ。台所にはお母さんが立っていた。少しやせたようだけど、思っていたよりも元気そうでぼくはとりあえず安心した。「おかえり」いつものお母さんの声がその日だけは特別に聞えた。そして、はちみつがたっぷりかかったホットケーキがとてもおいしかった。お母さんが入院する前と同じ日常がぼくの家庭にもどってきた。
 お母さんの様子が以前とちがうことに気が付いたのはそれから数日経ってからのことだ。みそ汁の味が急にこくなったり、そうではなかったりしたので、ぼくは何気なく「なんだか最近、みそ汁の味がヘン。」と言ってしまった。すると、お母さんはとても困った顔をした。
 「実はね、手術をしてから味と匂いが全くないの。だから、料理の味付けがてきとうになっちゃって・・・・・・」お母さんは深いため息をついた。
そう言われてみると最近のおかあさんはあまり食事をしなくなった。作るおかずも特別な味付けが必要ないものばかりだ。
 しだいにお母さんの手作りの料理が姿を消していった。かわりに近くのスーパーのお惣菜が食卓に並ぶようになった。そんな状況を見てぼくは一つの提案を思いついた。ぼくは料理が出来ないけれどお母さんの味は覚えている。だから、料理はお母さんがして味付けはぼくがする。共同で料理を作ることを思いついた。
 「ぼくが味付けをするから、一緒に料理を作ろうよ。」ぼくからの提案にお母さんは少しおどろいていたけど、すぐに賛成してくれた。「では、ぶりの照り焼きに挑戦してみようか」お母さんが言った。ぶりの照り焼きは家族の好物だ。フライパンで皮をパリッとするまでぶりを焼く。その後、レシピ通りに作ったタレを混ぜる。そこまではお母さんの仕事。タレを煮詰めて家族が好きな味に仕上げるのがぼくの仕事。だいぶ照りが出てきたところでタレの味を確かめる。「いつもの味だ。」ぼくがそう言うと久しぶりにお母さんにも笑顔が戻った。
 その日からお母さんとぼくの共同作業が始まった。お父さんも時々加わった。ぼくは朝、一時間早起きをして一緒に食事を作るようになった。
 お母さんは家族をあまり頼りにしないで一人でなんでもやってしまう。でもね、お母さん、ぼくがいるよ。ぼくはお母さんが思っているよりもずっとしっかりしている。だから、ぼくにもっと頼ってもいいよ。ぼくがいるよ。
 いつか、お母さんの病気が治ることを祈りながら心の中でそうくり返した。